出向契約と派遣契約とでの条件区別
出向契約と派遣契約とでは、労働契約締結関係の違いから様々な面での違いがでてきます。
特に給与面での時間外労働(残業)手当ての違いが目立ちます。
出向契約の場合は出向先企業の労働者と同じ条件で働くことになりますので、時間外労働手当ても出向先企業の労働者と区別されることはありません。
しかし派遣契約の場合は、派遣先企業の労働者と区別されることになります。
この区別は、派遣元企業と派遣先企業間で交わされる契約によって変わってきます。
例えば、時間外労働の一切を禁止するという契約もありますし、時間外労働した分の時給分が支給されるといった契約もあります。
※派遣社員に残業をさせる場合、労働基準法第三十六条(いわゆるサブロク協定)が派遣会社と派遣社員の間で結ばれている必要があります。
また、労働者派遣契約に時間外労働ができることを明記されている必要もあります。
これらの契約が結ばれていないにもかかわらず、派遣社員に対し時間外労働を行わせた場合、派遣会社ではなく派遣先会社が労働基準法に違反したことになります。
出向契約と派遣契約
派遣契約と契約内容が似通った「出向契約」という契約があります。
出向契約とは従業員が自己の雇用先の企業に在籍のまま、他の企業の事業所において相当長期間にわたって当該企業の業務に従事するという契約のことです。
出向契約は、出向元企業・出向先企業・出向労働者の関係、派遣契約は、派遣元企業・派遣先企業・派遣労働者の関係と、非常に契約関係が類似しています。
出向契約と派遣契約の違いはこの労働関係の所在の違いにあると言えます。
労働関係とは、「労働者が会社に対して労働力を提供することを約束し、会社がその対価として報酬を与えることを約束する」関係のことです。
出向契約の場合、労働者は出向先企業と出向元企業の両者それぞれと労働契約を結びます。
これに対し派遣契約の場合、派遣元企業との間のみに労働契約が結ばれ、労働者は派遣先企業と労働関係が結ばれた関係とは言えない状態となります。
つまり、出向契約の場合は出向先企業の労働者と同じ条件で働くことになりますが、派遣契約の場合は派遣先企業の労働者と条件の面で区別されてしまいます。
しかし、出向契約と派遣契約が区別が付きにくいなどのことから、企業ごとに出向契約と派遣契約のそれぞれの捉え方が異なっているのが現状となっているようです。